4月の新刊
4月の新刊
4月の新刊
101-0051 千代田区神田神保町3丁目25-11
蒼天社出版
TEL 03-6272-5911 FAX 03-6272-5912
喜助九段ビル
更新日:2023年11月20日
工事中
元気な中小企業を育てる
日本経済を切り拓く中小企業のイノベーター
村本孜
出版年月2015年3月
ISBNコード978-4-901916-43-1
本体価格 2,800円
四六判
頁数・縦208
執筆者
村本 孜(むらもと・つとむ)
1945年生まれ。1973年一橋大学大学院修了。同年から成城大学に勤務。経済学部専任講師・助教授・教授を経て、2005年から新設の社会イノベーション学部教授。この間、中小企業政策審議会委員、金融庁参事・金融機能強化審査会長・金融審議会専門委員、情報通信審議会委員などを務める。2004年から2010年まで(独)中小企業基盤整備機構副理事長兼務。著書に、『現代国際通貨論』(有斐閣、1985年)、『現代日本の住宅金融システム』(千倉書房、1986年)、『制度改革とリテール金融』(有斐閣、1994年)、『リレーションシップ・バンキングと金融システム』(東洋経済新報社、2005年)、『リレーションシップバンキングと知的資産』(金融財政事情研究会、2010年)、『信用金庫論』(金融財政事情研究会、2015年)、『元気な中小企業を育てる』(蒼天社出版、2015年)など多数
内容
「はしがき」から
日本の経済・社会にとってイノベーションが必要といわれて久しい。イノベーションは単に技術革新や経営革新に留まらない。社会や生活そのもののイノベーションこそが必要とされている。このようなイノベーションにはそれを担う人材を育てる教育のイノベーションも重要な課題である。このようなイノベーターは社会の各所で求められている。
さらに、日本経済の大きな課題は、人口減少問題である。二〇一四年五月に日本創成会議が一、七〇〇余りある自治体の半数が二〇四〇年には消滅するかもしれないというレポートを発表したが、これは各方面に衝撃を与えた。地方創生は政府の喫緊の課題として取り組まれている。この地方創生の担い手の主なプレーヤーが中小企業である。地場産業・地元企業は雇用の受け皿であるし、地域活性化の中心である。中小企業の約八割は東京以外にあるというが、この資源を地方創生に繋げることこそ重要で、その鍵は地域金融機関にもある。「地域のことは地域に聞け」、だからである。長い目で見ると、人口減少だけでなく、企業数も減少している。日本では人口が増加している時期にも企業数は減少しており、その大半は中小企業である。今こそ、経済の下支えをする「中小企業に光を」である。地域の中小企業を元気にする地域イノベーションの実現こそ地方創生である。
少なくとも経済の分野では、イノベーションを担うのは企業であり、それも機動力のある中小企業である。中小企業をイノベーターとして捉えると、すぐにベンチャー企業を思い浮かべるが、既存の中小企業もサポーティング・インダストリーとして磨いた技術・技能などによって新たな分野にイノベーターとして活躍しているケースも多い。
本書は、経済の発展を支える経済構造について、製造業を中心にリーディング・インダストリーとそれを支えるサポーティング・インダストリーの二層構造が重要であることから、中小企業を評価し、いかにして中小企業を育成・支援するのかを、日本の中小企業支援施策・政策をサーベイすることを意図している。日本の中小企業支援施策・政策は、戦後七〇年についてだけでも、諸外国に比べてそのパフォーマンスが優れている。
日本のこのような経験は、これから経済発展を志向する発展途上国や成長国にとっても重要なインプリケーションをもつ。たとえば、自動車産業を積極的に誘致し、この直接投資とNAFTAの有利性を活用して、経済成長を遂げている国にメキシコがある。日本からもニッサン、ホンダ、マツダなどが進出している。この完成車メーカーに部品を供給するサプライヤーも一次部品メーカーを中心に進出している。ところが、二次部品、三次部品などになるとその調達に困難が多い。サポーティング・インダストリーとしての中小企業が十分な技術・技能を有しておらず、サプライヤーとして機能していない問題があり、経済成長の隘路になっている。
このように中小企業の厚みのある存在は、経済発展の健全性・頑健性にとって不可欠である。この観点からすれば、中小企業を育成・支援してきた日本の経験・日本型モデルを整理しておくことは、重要といえよう。とくに、経済の二重構造問題に対応する意味をもっていた中小企業基本法が改正された一九九九年以降、すなわち二一世紀の中小企業支援施策・政策はそれまでとは異なった展開を見せてきた。元気な中小企業を積極的に支援する方向性が明確になった。とくに、中小企業金融の分野は金融の自由化・規制緩和、金融システムにおける市場型金融システムの活用すなわち複線的金融システムが整備される中で、大きな変化を遂げている。
本書では、このような中小企業政策の転換とそれに伴う中小企業政策とりわけ中小企業金融の新展開を整理している。とくに、中小企業に対する金融行政がリレーションシップ・バンキング(地域密着型金融)に軸足を置くようになったことを踏まえて、課題の整理を行った。政策金融・信用補完のほかに、証券化・動産担保(ABL)・知的資産経営・クラウドファンディング・DDS・CRDなど多くの手法も整備されてきた。このような課題についての理解が広く深まれば幸いである。このため詳細な引用注などは割愛したが、本書を基にした研究書を別途用意しているので、そちらを参照して頂ければと思う。
目次
序 章 元気な中小企業を育てるため――イノベーターとしての中小企業…… 1
第1章 なぜ、いま、中小企業なのか……………………………………… 7
第1節 中小企業という存在 8
第2節 イノベーションの必要性 10
⑴ シュンペーターのイノベーション 10
⑵ いま、イノベーションが必要なわけ 11
⑶ 中小企業への期待 16
⑷ 『中小企業白書二〇〇九年版』の指摘 17
第3節 元気な中小企業 24
⑴ 「痛くない注射針」 24
⑵ 「はやぶさ」の快挙を支えた中小企業 26
⑶ 「まいど一号」、「江戸っ子一号プロジェクト」 26
⑷ 「葉っぱビジネス㈱いろどり」 28
第4節 産業史を彩る中小企業のイノベーション 30
⑴ 戦後復興期の代表例 31
⑵ 高度成長・安定成長期の例 32
第2章 中小企業の支援体制――法的側面…………………………… 35
第1節 中小企業基本法の改正 36
⑴ 中小企業の二つのカテゴリー 36
⑵ 中小企業基本法 38
⑶ 中小企業基本法の改正 39
⑷ 改正基本法の理念 41
第2節 小規模企業の活性化――小規模企業振興基本法の制定 43
⑴ ″ちいさな企業〟未来部会とりまとめ 43
⑵ 小規模企業の理念・施策の方針・定義の弾力化、中核となる政策課題 44
⑶ 小規模企業振興基本法 46
第3章 中小企業憲章の制定――中小企業政策のイノベーション 49
第1節 中小企業基本法改正以後の施策 50
第2節 中小企業憲章の制定 52
⑴ 制定の推移 52
⑵ 「中小企業憲章」に関する研究会 54
⑶ 中小企業憲章の内容 55
第4章 中小企業支援・政策システム――中小企業金融を中心に 65
第1節 中小企業政策・支援施策 66
⑴ 中小企業支援策 66
⑵ 中小企業金融支援―政策誘導効果・補助金効果等:政策金融機関の直接融資 68
⑶ 信用補完――公的信用保証 69
⑷ 地方自治体の制度融資 76
⑸ 民間金融の促進行政 78
第2節 中小企業金融の新たな手法――担保の拡大と知的資産 79
⑴ 動産担保の活用 79
⑵ 売掛債権担保融資 80
⑶ ABLの整備 82
⑷ リスク・データベースの構築(CRDなど) 87
⑸ 定性情報の把握――知的資産・知的資産経営報告 90
第3節 個人保証の問題 94
⑴ 中小企業金融における個人保証――個人保証の機能と問題点 94
⑵ 債権保全における個人保証の限界 96
⑶ 経営者本人保証の限定 97
第5章 中小企業金融の新たなインフラ…………………………… 101
第1節 市場型間接金融 102
⑴ 複線的金融システムと市場型間接金融 102
⑵ 市場型間接金融の手法 105
⑶ 日本銀行の資産担保証券買入れ 107
⑷ 中小企業金融公庫の証券化――民間融資の促進効果、リスク低減効果 109
第2節 電子記録債権 111
⑴ 電子記録債権とは 111
⑵ 記録機関 113
⑶ 二つの電子記録債権 115
第3節 資本性負債(DDS、劣後ローン――メザニン・ファイナンス) 117
⑴ 擬似エクイティ 117
⑵ 資本性借入金(DDS)の活用 118
⑶ 金融検査マニュアルの改訂 120
第6章 中小企業支援の新しい仕組み……………………………………………………… 123
第1節 ベンチャー・ファイナンス 124
第2節 クラウドファンディング 129
⑴ クラウドファンディングとは 129
⑵ クラウドファンディングの類型 131
第3節 中小企業会計・会計参与 135
⑴ 中小企業会計 135
⑵ 会計参与 137
第4節 中小企業の再生 138
⑴ 中小企業の再生 138
⑵ 金融円滑化法との関連 142
⑶ 地域経済活性化機構(旧企業再生支援機構) 145
⑷ 中小企業再支援協議会 147
⑸ これまでの事業再生の評価 152
第5節 まとめ 156
第7章 元気な中小企業を目指して…………………………………… 159
第1節 政策を知る、調べる、活用する 160
⑴ 政策にアクセスする 160
⑵ 「J-net21」 163
第2節 知的資産報告書を作る 165
⑴ 中小企業の生命線 165
⑵ 知的資産経営報告書を作る 167
⑶ 地域金融機関への期待 177
第3節 金融機関を使う 180
⑴ 金融機関との付き合い 180
⑵ 信金と付き合う 183
⑶ 資本性借入金(DDS)にも目を向ける 186
第8章 未来を切り拓く…………………………………………………… 189
第1節 人口減少に対応する 190
⑴ 消える自治体 190
⑵ 地域金融機関への思い 192
⑶ 士業にも活躍の場を 192
第2節 好循環の仕組み 193
⑴ 団塊世代の活躍の場を 193
⑵ 複数の制度の組み合わせも 195
⑶ リバース・モーゲジの改善 198
第3節 イノベーションを起こす文化 199
1984 年)、『現代国際通貨論』(有斐閣、1985 年)、『現代日本の住宅金融システム』(千倉書房、1986 年)、『リレーションシップ・バンキングと金融システム』(東洋経済新報社、2005 年)、『リレーションシップ・バンキングと知的資産』(金融財政事情研究会、2010 年)など多数あり。
『日本占領期性売買 GHQ関係資料』
16社協賛
出会った本はみな新刊だ!
専門書販売研究会は、2000年に人文・社会科学の専門書を発行している版元の4人の発起人によって「4社の会」として発足しました。小社の代表取締役である上野もその一人です。近年の、市場環境の変化は、専門書販売にとって厳しいものになりました。しかし長年研究を重ね出版された研究書・著作をうずもれさせてしまっては社会的損失と思い、「はじめてあった本は、いつも新刊」として読者へ・研究者へ・図書館へ書籍情報を発信することにしました。会員も増え「専門書販売研究会」と名称を変え、分野も多彩になり哲学・歴史・経済・農業・芸術まで網羅した会となりました。現在は16社で専門書の販売のための研究・情報を共有する活動をしております。
これからも、コンセプト「はじめてあった本は、みな新刊」のもとに、日ごろ目にすることのない既刊書の再チャレンジを目指し、「こんな本もあったんだ」と言っていただけるように読者との出会いを目指します。